Steel Wheels

Point of no return

Keihin CR Special インプレ #1

バイパスポート追加加工CR-Sとは?

自分がこの度購入したCR-S 33はノーマルではありません。

本来ならピストンバルブの下にしかスロー系のガスの出口(トランスファーポート)はありませんが、ピストンバルブからスピゴットの間にそのスロー系のガスの出口を追加するというキャブボディの改造を施したものです(バイパスポート追加加工)。他のキャブレターで言う所のアイドルポート、パイロットポート相当のものの追加ということです。

見覚えがあると思った方もおられるかもしれません。

そう、ヤフオクで個人の方が販売しているものです。

パイロットスクリューを追加したものも販売されていましたが、今のメインはバイパスポート加工のようですね。

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小さな穴が空いているのがわかると思います。これがそのバイパスポートです。

先のエントリーで「CR-Sは汎用性を持たせた設計になっている」と書きました。キャブボディにパイロットスクリューのザグリがあることもその表れです。

実は80年代にケーヒンから出荷されたCR-Sにパイロットスクリューと上の写真のアイドルポートがついているものがありました。2輪車向けだと2スト用とシングルシリンダのオフロードレーサー用です。

現在、ケーヒンから出荷されているものに残念ながらパイロットスクリューやアイドルポートのあるものはありませんが、パイロットスクリューのザグリがあっても貫通していないのと同様にボディには写真のポートに向けたスロー系の経路がベンチュリー側から数ミリのところまであります。

この加工はその経路を貫通させたものです。

と、書くと簡単ですが、非常に難易度の高い加工です。パイロットスクリューの戻し量相当の穴径を見つけたり、高精度な治具を作ったりとアイデアと試行の継続そして高い技術力がなければできない事です。

その効果は?

CR-Rのノーマルでの弱点は大きな番手のスロージェットを使わないと微開域が成立しないということです。#55〜#70という非常に大きな番手のスロージェットを使うことが標準となっています。

ケーヒンの他のキャブレターでは一般公道向けのCV型や2スト用を含め#40前後が使われています。これは前段で挙げたアイドルポートの有無によるものです。

CR-Sの#55〜#70のSJで一応街乗りできる調整は可能ですが、ある程度の時間走らせるとアイドリングがどんどん上がって行ったり、最悪の場合カブってしまったり、またそれらを回避するためアイドリングを高めに合わせると低速域での取り扱いがシビアになったりします。

ポートの追加によってそれらは回避できます。スロットルバルブによって規制されるトランスファーポートだけでなくアイドルポート(相当)からもアイドリングから微開域で燃料が供給されるので小さなスロージェットが使えます。その番手は#40前後で他のケーヒン製キャブレターと同じレベルです。

同じような番手のスロージェットで同じようなポート構成。つまり、同じように扱えます。極端な言い方ですが、微開域はブラインドテストするとCV型キャブレターと区別つかないくらいでしょう。吹け上がりにピストンバルブ式特有の癖はありますが、神経質に感じることは全くありません。

また小さなスロージェットを使うことによって各ジェットが影響する部分を明確に感じられるようになり、セッティングが格段に楽になります。このブログに頻繁にSetting Noteなるエントリーを投稿していますが、ごく早い段階で最後の微調整という域に入っています。感覚的にはあとはジェット類は固定でエアスクリューの調整だけで1年乗り切れるんじゃないかとすら思えます。

CR-Sをセッティングしたことがある人には眉唾な話かもしれませんが、このバイパスポート追加加工はそれほどの効果があります。

FCRよりいいの?

なにをもってして「良い」とするかですが、どんな改造を施してもどんなパーツを追加してもCR-SがFCRに勝てるところは丸ピストン故の「穏やかさ」「人の感覚にマッチするタメ」くらいです。FCRはフラットバルブ+加速ポンプでレスポンスを狙っているのですからある意味当然ですね。

あと強いていうなら耐久性でしょうかね。CR-Sも似たようなもんなんですけど、FCRの方が機構上どうしてもキャブボディが傷みやすいという傾向が強いようです。

実は自分はFCRのセールスポイントでもある加速ポンプがどうしても苦手で、4スト250のトレールのキャブに2スト用のPJやPWKを使っていました。その後同じようなことを感じていた人が多かったのかFCRの加速ポンプの機能を制限するキットが売られたりしていましたね。これも個人の嗜好の問題でキャブレターとしての絶対的な性能はFCRの方が上です。今手元にあるバイパスポート追加加工を施したCR-Sでも正直な所「太刀打ちできない」というレベルです。

じゃあFCRを使えばいいじゃん というのが正解であり正義です

が、

CR-Sの方がかっこいい(個人の見解です)

 

結局これに勝るものは無いんですよね。いくら世の中の評価が高く自分もそれを認めていても好みの形状のものがあるとそちらを選ぶというのが人というものでしょう。

 

悪く無いですよ、CR-Sにバイパスポートを追加したやつは。ノーマルCR-Sの神経質なところは影を潜め扱いやすくなってます。

80年代前半の空冷四発に似合いますしね(これも個人の見解)